クラブなるものに潜入してみた。

友人がクラブでDJをやると言う。
クラブと言っても「マンガ・イラストクラブ」とか「図工クラブ」とかじゃなくて
ク→ ラ↑ ブ↑ だ。
「一回来てみてよ!」
「あ、うん行ってみたい!」
というような場当たり的な約束で実現したこの冒険。
正直なところ、オレはそういうところでワッショイするタイプの人間ではない。
正直行くのが怖い。
きっと「スーツでロンゲで金髪の伊達男」とか「小麦色に染め上げた肌を惜しげもなくギリギリまで披露するオネエ」とかで構成されている世界に違いない。
うあぁあオレあんまりそういう系と近付きたくない怖いよーー!
何よりもそこにオレが入って乗れず「なにこいつKY」的な冷罵的な目線で見られたら、そらもうタイガーホースですよ。
 
でも、オレは新しいドアをノックしてみたかった。
もしかしたら意外にはまり夜の街に溶け込み人種を問わず見知らぬ一夜の仲間とハイタッチするようなパラレルな世界もあるかもしれない。
また、いつか子供ができ、物心がついて、父であるオレに
「クラブってどういうとこ?」
と聞かれて
「んっとね、マンガ描いたりプラモ作ったり…」
という解答しか持ち合わせていない親父にはなりたくないのだ。
 
クラブに普通に行く人は是非ともブラウザの戻るボタンを押してほしい。
そうでない人もあわよくば押してほしい。
ここに書くのはオレの株を上げるものでは決してないんだぜ。
 
オレが潜入するのは23時半から29時まで続くイベント。
友人が登場するのは24時から25時の間。
実は行く前から25時で帰る気満々。
「ノる気ないなら最初からくんなよ」と言われたら弁解の余地なし。
ノれる気が一切しませぬ。
洋楽をかけるイベントみたいだけど、オレが知ってるのはビリージョエルとフラテリスのみ。
だからオレはテーブルに腰を落ち着け、動く群集を傍観させて頂こうと思う。
楽しむにはまずどういうものか知らなければ。
今夜の目標はそこに設定した。
 
会場の入り口で入場券を求める。
「すいません、大人一枚」
「あ、はい。年齢ご確認のため身分証明書のご提示をお願いします。」
そうか、客は成人を対象にしているのか。ぼぐふっ。
初っ端からいいもんもらっちまった…やるなオレ自身!
 
会場に入るともう何かしらが始まっていた。
まだ客はほとんどいなくて、誰が客でスタッフだか判別できない。
バーカウンターがあり、バーテンは判別できたからジーマをもらう。
機材の近くに誘ってくれた友人がいた。
二三言交わすがほぼ重低音に打ち消される。
フロアに踊る人はいない。
客ぽい人はテーブルに座っていたから予定通りオレもそれに習う。
クラブとは音の良いバーのことか…?
 
日付が回り、DJが友人に替った辺りから客が増え、フロアに少しずつ入ってきた。
客も当初に予想していたような人はいなかった。
あれはHEN☆KEN。好感がもてる服装多し。
最初に踊りだしたのは外国人男女だった。女性がくるっと回ってた。
曲が変わる度に踊る人が増える。
踊るというか、立って自由に体を動かす。
特徴的なリズムに合わせて手を振ったり口ずさんだりして動く。
なるほど、そういうものか。
概ね把握した。
社交ダンスではないらしい。
 
ここまですべて知らない曲だった。
しかし突如聞き覚えのあるメロディが流れた。
フラテリスだ!
嬉しくなって立ち上がり、三本目のジーマをもらい友人@DJ中に近付こうとしたけどその頃にはフロアはぎっしりゆらゆら黒山が動いていて、仕方なく、遠目の半径でゆらゆらしてみた。ああ、これ、いいね
 
友人のエンペラータイムが終了し、オレはクラブを後にした。
学んだことがある。
楽しむ上で「一緒にいる友人」と「知ってる曲」はあまりにも重要。
それがなくても楽しめる人は別だけど、オレはそれがあって楽しむものだと思った。
 
クラブから出てきた青年は途中のコンビニで切れたタバコを買い、事前にしっかりチェックしておいたネカフェに入って行ったと言う。