昨夜未明

我が嫁、YMT製125CCのスクーターでF中の街を疾走していると
ふと前方にいかにも私は巡査であるという身なりの男性が現れ、
しかも赤い発光する棒を振っていたので停止した。
ちっ、何たる外乱。
正当な公務であるのはわかっているのだけれど
職務質問を受ける度に私は突然に時間を拘束される事に理不尽さを感じてしまう。
デートに行く途中だったらどうするのだ、と。
 
「すいません、イヤホンはずしてください。」
「…(スイッチは切ったがイヤホンはとらなかった)」
「お時間取らせませんので、歩道まで出てもらっていいですか?車も通りますので。」
「はい(そんなことわかってるわいあんたが止めたんだろうが)」
 
いくつか質問を受けたが、今回は普段の職質ではなく二輪による犯罪増加に対する取締りらしい。
おそらくはこの時間帯に走っている二輪をネズミ捕り式にとっ捕まえ、DBにデータを追加しておくのだろう。
巡査は五分程度で作業を終え、私は自由になった。
 
「ご協力ありがとうございました。」
「お疲れ様です。」
 
よし。
特にイヤホンの事は咎められなかったのは不幸中の幸いだった。
本当は両耳にイヤホン付けながらの走行は道交法違反らしいのだが何も言わなかった所を見るに
その項目はチェックするにも事実上できないものなのかもしれない、と想像した。
 
ウィンカーを出し、大げさに後方確認し、遠慮がちに巡査に一礼し
私は再び嫁を走らせた。
まったく、デートに行く途中じゃなくてよかった。