サイレン

朝の3時前に目を覚ました。
窓を開けて寝ていたため部屋にはそこそこ涼しい空気が入ってくる。
起きてからしばらくその風に当たってぼーっとしていると、
遠くの方から消防車のサイレンが聞こえてきた。
火事か…。
また一つこの街で不幸が生まれたらしい。
サイレンはそういった合図も自然と兼ねる。
子供の頃はこの音に思いを馳せたりした。
「怪我した人、大丈夫かな」
「火事で逃げ遅れたりしてないかな」


今はサイレンを聞いても何も思わない。
その音が響く度、不幸な人が生まれているという事実を忘れていた
麻痺しているのか。
むしろこんな事を考える方がおかしいのか。
それに気付いても、結局オレには何も出来ないのに。
大人になるということが「感情の損失」なら
オレは着実に大人になってきている。