好きな小説家さん「中村航」

なんでこの人の作品が好きなんだろう、という疑いにも似た疑問の答えがようやく頭の中でことば化できてきたから、出会ってから十数ヵ月経った今書いておこうと思う。
 
彼は格別凝った文を書くというわけでもないし
格別展開が面白いわけでもない。
また確固たるメッセージ性があって書いているようにも思えない。
ただ、「いいな」と思ったことをきちんと読者に伝える能力がある。
言い換えれば、それは人の心を温める能力。
日常の、例えば仕草や出来事、思ったこと。
彼には恐らくそれらの中にある「いいな」を見落とさずつまみ上げて、それを嫌味なく伝えるセンスがある。
彼の「いいな」がちりばめられた文章は往々にして居心地が良く、浸り続けていたくなる。
読み終わった後に登場人物のまねをしたくなったりもする。
彼の温かい世界をオレの現実に適用させたくなるんだろう。
 
いつか、友人がオレの部屋を訪れて「100回泣くこと」を見つけて言った。
「そういうタイトルの本って手に取る気がしないんだよね。」
読みもしないで批評するのは愚かだけど、彼は今タイトルを読んでそれに対して意見を述べてる…むむむとオレは困った。
「読んでみればわかる良さがあるよ」
みたいな事を言って流した。
 
上に書いた文でオレが抱いたイメージの全部は網羅できていないだろうけど、せめてその1/3でも伝えたかった。
いつでもオレはことばを作るのに時間をかけ過ぎる。
だから不器用だってんだよ。