手紙を書くこと

何をするのにもいい季節。
少し早目に乗った京浜東北線で決めた。
「ポストに手紙が届いていたら、近所のサイゼで手紙を書く。届いていなかったら自転車で走ろう。」
 
つい最近T美彦氏の新作を読んだ俺は楽勝で影響を受けた。
手紙を書くという行為に思いっきり浸ってみたい。年賀状も中学に書いたのが最後だ。
相手はあわよくば…ずっと連絡がない昔の友人としてみたい気持ちはあったけど、
いきなりそんな事をしてみては俺が何かの宗教か或いはいかがわしい商売を始めたかと誤解される恐れがある。
ひとまず長い親交がある旧友と彼女にけしかけ、文通相手に仕立てることに成功した。
 
何事も形から入り、それっぽくやれてる自分に酔うのをわが道とする俺。
レターセット、切手(80円、90円、10円を数枚ずつ)、そのどれを貼るか判断するためのレタースケール(秤)、ペーパーナイフ、封に使うことにしたお洒落な和紙テープ☆、それらをまとめて入れるためのブリーフケース。肝心のペンは彼女から2月にもらった愛用の万年筆だ。
もう届いては返し、届いては返しの日々を送る準備は万端なのだけど。
ポストに入っていたのは空気だけ。
むむん。
仕方がないから自転車に乗って俺は夜の街に消えた。
「燕のように走ってやるんだからねっ」